詩吟の情報01「用語の定義」
              
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 詩吟の用語は流派によって異なるようである。
したがって、このホームページで私なりの情報を提供しようとした場合、用語を統一しておかないと、誤解が生ずる可能性があると思います。
そのためにここで一括して定義しておきます。
なお、用語は、岳風会の教本である「和漢名詩の吟じ方第一」の6頁からの「漢詩の吟じ方  木村岳風述」に多く拠りました。
その他は私がかつて所属していた岳精流(日本詩吟学院岳精流)で使われている用語を採用しました。
また、詩吟特有ではない一般的な単語も参考までに記載しました。 
「うちの流派ではこれを○○と呼んでいるよ」というような情報を頂けるとありがたいです。

【漢詩】
漢語の文法に基づいて漢字だけで作られた詩(私の勝手な定義です)。
【白文】訓点の付かない漢字だけの漢文。
【読み下し文】訓点に基づいて漢文を日本語に翻訳した文、詩吟が対象とする文である。
訓点
漢文を訓読するためにつけた送り仮名と返り点。
【絶句】
約束に基づいた韻を含む4句の漢詩、本稿では4句の漢詩全てを言う
【律詩】約束に基づいた韻を含む8句の漢詩、本稿では8句の漢詩全てを言う
【古詩】
律詩や絶句は唐代に確立された韻を含む漢詩であるが、それより以前の漢詩のこと。本来は4句の古詩は絶句とは呼ばないし、8句の古詩を律詩と呼ぶのは本来は間違いである。
【三体詩】6句からなる漢詩
【五言】
1つの句の漢字の数が5つからなる漢詩、例:五言絶句、五言律詩。
【七言】
1つの句の漢字の数が7つからなる漢詩、例:七言絶句、七言律詩。
【奇数句】
漢詩は偶数句から構成され、詩吟においては2句単位に節調が構成されるので、そのうちの最初の句のこと。
【偶数句】漢詩は偶数句から構成され、詩吟においては2句単位に節調が構成されるので、そのうちの後の句のこと。
【句】
漢詩の構成の一つ、5語又は7語からなる。絶句は4句、律詩は8句からなる。
【節】「二句を三節に分け」ることによって生じたもの、例:「一節を一息で吟ずる」
【小節】1節が1〜3小節に分けられる、この小節の最後の母音が延ばされ節(ふし)が付けられるのが詩吟の特徴である。
【音階】詩吟に使用される音階には邦楽の陽旋法と陰旋法がある。詩吟では音階を構成する各音を、低音、中音、高音の3つのに分類されるのが普通である。これらの他に高音より更に上の最高音、低音よりも更に下の最低音とが詩吟に使われる音の全てである。
【陰旋法】ラシドミファの5つの音からなる旋法(音階)、レソ抜きとも呼ばれる。
【陽旋法】ドレミソラの5つの音からなる旋法(音階)、ファシ抜き又はよな(四七)抜きとも呼ばれる
【階名】詩吟に採用される音階のそれぞれの音階の名前、邦楽本来のもの、詩吟特有のもの、洋楽に順ずるものなど、色々ある。本稿では洋楽に使われるドレミと「高音」などの表現を用いる。
【主音】音階で基本になる音、洋楽での長調のド、短調のラに相当、漢詩吟では偶数句の最後の音はこの主音で終わる。陰旋法ではミ、陽旋法ではソ、俳句ではラである。
【最高音】主音の1オクターブ上の音、これが詩吟における最高音、主音の1オクターブ上で陰旋法ではミ。
【高音】陰旋法の場合、高い方のラシドの3音がこれに相当する 
【高高音】3つの高音の高い方の音、陰旋法ではド
【中高音】3つの高音の中の音、陰旋法ではシ
【低高音】3つの高音の低い音、陰旋法ではラ
【中音】陰旋法の場合、レミファの3音がこれに相当する 
【高中音】3つの中音の高い音、陰旋法ではファ
【中中音】主音のこと 
【低中音】3つの中音の低い音、陰旋法ではレ(音階に含まれないがまれに使用される)
【低音】陰旋法の場合、下のラシドの3音がこれに相当する
【高低音】3つの低音の高い音、陰旋法ではド
【中低音】3つの低音の中の音、陰旋法ではシ
【低低音】3つの低音の低い音、陰旋法ではラ
【最低音】主音の1オクターブ下、この音が詩吟における最低音
【余韻】小節の最後の母音を伸ばし、それにふしを付けたもの。余韻の詳細については「余韻の分類」の項による
【ゆり】余韻において音高を変えるときに付け加える短い音高の変化(こぶし)
【小ゆり】ゆりにおける音高の短い変化の1単位
【吟譜】音楽での五線譜に相当するもの。宗派によって異なるようであるが。具体的には該当ページを参照のこと
【読み下し文】(前出)
【音高記号】高音、中音、低音を示すための記号で、吟譜の1つの構成物
【余韻記号】岳風会系の流派で使用される吟譜に使用される記号、具体的には該当するページを参照のこと
【ふり仮名】吟譜において漢字に付けた仮名
【アクセント記号】吟譜のそれぞれの単語のアクセントを示すもの。岳精流の教本には表示されている。
【音変記号】1つの小節の中で音の変化を示すための記号、しゃくり(下に凸の半円)、つなぎ(右に凸の半円)が一般的
【強調記号】】 「’」で表されるものでその語を特に強調するための記号
【つなぎ】音変記号の1つ、音高が変化する間に付けられて変化の仕方を指定する
【しゃくり】
音変記号の1つ主音の後に付けられてしゃくりの表現を指定する
【コンダクター】詩吟の伴奏用の電子楽器。詩吟に適した音階が出せ、本数を容易に設定することができる。
【譜付け】漢詩に詩吟の節調をつけること。音楽での作曲に相当する。
【吟法】詩吟を吟ずるときの方法(解説にならないか)
【節調】音楽でのメロディー、又は旋律のこと
【詩心】詩が表現する心、詩意と概ね同じ
【詩意】詩の意味、詩心と概ね同じ
【一節を一息で吟ずる】二句を3節に分かつのが詩吟の原則であるが、それぞれの節を一息で吟ずること。
【連吟】1つの詩を複数人で直列に吟ずること
【合吟】1つの詩を複数人で同時に吟ずること
【独吟】一人で吟ずること、最も一般的な吟法
【素読】詩を節調をつけずに読むこと。詩吟の基本技の1つ
【本詠】短歌においては二度吟じられるのが一般である。そのとき、後の吟が本詠と呼ばれる
【序詠】短歌においては二度吟じられるのが一般である。そのとき、始の吟が序詠と呼ばれる
【本】音階の高さ、言い換えれば主音の高さを表すときの単位。1本の差は洋楽における半音
【1本】音程(音高の差)が半音のこと
【1本】
主音が洋楽のA(220ヘルツ)になる音階。陰旋法ではニ短調(調子記号はb1つ)で成人男性の基本的な高さでもある。1本分高くなるごとに数字が増える。ちなみに陰旋法での8本は洋楽でのイ短調(調子記号が無し)に相当する。
【水1本】
主音が1本よりも1本分低い音階。1本分低くなるごとに数字が増える。8本の1オクターブ下は水5本である。「水」は「みず」と読み、「低」の字があてられることもある。「みずいち」と呼んで「ほん」が省略される場合がある。
【アクセント】
日本語のアクセントは音高によって表現される。したがって、歌曲、流行歌、民謡などの歌唱芸術ではアクセントはメロディーに組みこまれる。しかし、詩吟では吟者がアクセントを考慮して節調(メロディー)を構成して行かなければならない。
【標準アクセント】標準語(共通語)に対応するアクセントのこと。一般にはこのアクセントが詩吟に採用される。大阪弁のアクセントの詩吟があってもかまわないが全国区にはなれない。
【平板】アクセントの一種。単語の最初の語は低く、後の語は高くなるようなアクセント。例:鞭声(川中島より)
【中一高】アクセントの一種。単語の最初の語が低く、後の1語が高く、その次の語が低くなる。例:心
【中二高】アクセントの一種。単語の最初の語が低く、後の2語が高く、その次の語が低くなる。例:山桜
【中三高】アクセントの一種。単語の最初の語が低く、後の3語が高く、その次の語が低くなる。例:渡し舟
【頭高】アクセントの一種。単語の最初の語が高く、後の語が低くなる。例:夜
【尾高】アクセントの一種。単語2語で最初の語が低く、後の1語が高く、次の助詞が低くなる。例、雪
【大回り】頭高のときに、
第2語を第1語と同じ高さにした上で音を下げる(下げる位置をずらす)
【渡り】
アクセントが平板、尾高など、第一語が低く第2語が高いときに、第2語を第1語と同じ高さにした上で音を上げる。
  「大回り」、「渡り」ともに詩吟に限らず日本語の歌唱に多く使用される節回しである。
  詩吟でもよく使用されるが多用は避けるべきである。「大回り」よりも「渡り」が多く使われるが、それが癖になっている吟者もいる。

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