詩吟の情報02「音階」

            ホームへ      詩吟へ      次へ

1.各種の音階の構成とその比較(1段差は1本差(半音))

 詩吟は、邦楽の音階(旋法)である陽旋法、陰旋法が使用される。
しかし、現在最も多く採用されている旋法は陰旋法であり、主音は「ミ」である。
レソ抜きと呼ばれている。陽旋法はファシ抜きである(よな(四七抜き)とも呼ばれる)。
参考までに音楽における一般的な音階である長音階と短音階、及び特殊な音階であるジプシー音階を列記してある。
更に言えば、沖縄の音階は、ドミファソシである。
陰旋法のミファラシドのラがシに置き換わったもので、この音階を聞いただけで沖縄を思い浮かべる。
 詩吟では最高音と最低音の間の2オクターブが使用される音域である。
一般に2オクターブというのは広い音域で、通常の曲はせいぜい1オクターブ半(例えば、ドから上のソ、ソからドなど)である。
自分の本数を決めるときには特に最高音が発声できるかどうかで決めるべきである。
しかし、最高音は滅多に使用されないので、これを無視して高高音がちゃんと出ればよいという前提で決められる場合もある。
なお、クラシック歌手のテナーの場合、bBが最高音と考えられる(例:ベートーベンの第9交響曲第四楽章のテナーソロ)。
このbBが最高音になる本数は2本である。
 

−ド−−−ラ−−ラ−−−ラ−−-−−ミ−−−−−−ソ−−−ド−
−シ−−♯ソ−−−−−♯ソ↓−−−−−−−−−−−−−−シ−
−−−−− −−ソ−−−↑ソ−−−−−−ソ−−−−−−−−−
−−−−−−−−−−−♯ファ↓−−−−−−−−−ミ−−−−ラ−
−−−−−ファ−−ファ−−↑ファ−−−ド−−(ファ)−−−−−−−−
−ソ−−−ミ−−ミ−−−ミ−−−−シ−−−ミ−−−レ−−ソ−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−ファ−−−レ−−レ−−−レ−−−ラ−−−−レ−−ド−−−ファ−
−ミ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ミ−
−−−−−ド−−ド−−−ド−−−−−−−−ド−−−−−−−−−
−−−−−シ−−シ−−−シ−−−−−−−−−−−ラ−−−レ−
−−−−−−−−−−−−−−−−ファ−−−−−−−−−−−−−
−ド−−−ラ−−−ラ−−ラ−−−−ミ−−−ラ−−−ソ−−−ド−(主音)
−シ−−♯ソ−−−−−♯ソ↓−−−−−−−−−−−−−−シ−
−−−−−−−−ソ−−↑ソ−−−(レ)−−ソ−−(ファ)−−−−
−−−−−−−−−−−♯ファ↓−−−−−−−−−−−ミ−−ラ−
−−−−−ファ−−ファ−−↑ファ−−−ド−−−−−−−−−−−−−
−ソ−−−ミ−−−ミ−−−ミ−−−シ−−−ミ−−−レ−−ソ−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−ファ−−−レ−−レ−−−レ−-−−ラ−−−レ−−−ド−−ファ−
−ミ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ミ−
−−−−−ド−−ド−−−ド−−−−−−−−ド−−−−−−−−−−
−−−−−シ−−シ、−−シ−−−−−−−−−−−−−−−レ−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−ド−−−ラ−−ラ−−−ラ−−−−ミ−−−ラ−−ソ−−−ド−

     和声 自然 旋律

沖縄音階    短音階     陰   俳句  陽旋   長音階
(参考)
                └−− 詩吟 −−┘

 主音を示す横線は赤色で示してある。

2.陰旋法の五線譜、数字譜及びドレミ譜表示
  詩吟で五線譜を使用するのに異議を持つ人は多いと思う。
コンダクターの解説書には線譜として、10本の線が使用されている。
邦楽で多く使用されているのではないかと思う。
これに対応する数字符号は、1233’455’67が使用される。
これはドレミでは、ラシドレミファソラシドに対応している。レとソがダッシュ付きで表される。
ただ、10本の線では瞬間的にその音を特定するのは困難である。
その点、五線譜は線と線の間の「間」も1つの音を当てはめることで瞬間的な読み取りを容易にしている。
筆者の音楽経験からも10本の線譜は採用する気にはなれないのでこのホームページでは一切触れないことにする。

 最も多く使用される陰旋法の場合での五線譜表現を示す。主音を第3線(中央の線)に配置してある。
そうすると、最高音と最低音とが1本の加線の上の音として上下対称に表すことができる。
ちなみに、この主音が下から3本目の線にあってこれが「ミ」になるのはト長調(シャープ#が1つ)に対応する。
音の高さには関係しないが。 

                                    ・
最高音                       ○(2)    ミ    3
                         −−−      ・
   高                    ●    ド    1
高音 中−−−−−−−−−−−−−−−−−♯●−−−−シ−−−−7−−−−
   低                ●    ラ    6
   −−−−−−−−−−−−−−−x−−−−ソ−−−−5−−−−−−−−
   高            ●     ファ     4
中音 主音−−−−−−−−−●−−−−ミ−−−−3−−−−−−−−−−−−
   低        △ 3)   レ    2
   高−−−−−−●−−−−ド−−−−1−−−−−−−−−−−−−−−
低音 中   ♯●    シ    7
   低−−●−−−−ラ−−−−6−・−−−−−−−−−−−−−−−−−
                ・
      −−−
最低音 ○(1) ミ    3

                    ・


注1;○:稀に使用される(ex. 低音の吟変わり)
注2;○:稀に使用される(最高音) 
注3;△:稀に使用される(中音しゃくり、中音吟変わり) 
注4;ファ(4)のゆりのために♯ファ(♯4)が使用さることがある

3)本数と洋楽の調子との関係
  洋楽ではハ長調とかト短調とかという表現でその曲の主音の高さを表す。
ハ長調とは、その曲は主音(ド)がハとなる長調であることを表し、このとき調子記号は無い。
ト短調はトが主音(ラ)となる短調であることを表す。
本数が同じであっても主音のドレミが異なると対応する洋楽における調子も異なる。
 洋楽の素養のない人にとってはこの表は何の意義もないと思う。
少しは素養のある人は「このような関連があるのだ」ということを知ってもらえればよいと思う。
詩吟も歌唱芸術である限りドレミの音階に乗っている。
そうすれば、音階に関する理論は全て洋楽のそれで律することができるのである。

 本 数  陰旋法
主音ミ
陽旋法
主音ソ
俳句
主音ラ

八本(低五本)
七本 
六本
五本
四本 
三本
二本
一本
低一本
低二本
低三本(十本)
低四本(九本)    

無し
♯5
♭2
♯3
♭4
♯1
♯6
♭1
♯4
♭3
♯2
♭5
#3
♭4
♯1
♯6
♭1
♯4
♭3
♯2
♭5
無し
♯5
♭2 

♯1
♯6
♭1
♯4
♭3
♯2
♭5
無し
♯5
♭2
♯3
♭4

注1;一本の主音はA(約220Hz)
注2;♯5は♭6でもある(異名同音)
注3;「低」は「みず」と読む、「水」が充てられることもある。

3.尺八との関連
 いわゆる1尺八寸からなる尺八は全ての穴が塞がれた状態での音はDの音である。
周波数にして約147ヘルツである。
1本の尺八で演奏することのできる本数の数は、1つ、3つ、12(全部)が考えられる。
1つのときは全部の本数を演奏するためには12本の尺八(実際の大きさはもはや尺八ではないが)が必要である。
 3つならば4本で済む。勿論、12の本数を1本の尺八で演奏することができるのが理想である。
 洋楽器と言われる楽器は全て半音階が演奏できる。
このような楽器の場合、原理的には1つで全ての調子を演奏することができる。
ピアノやバイオリンなどはその典型である。
しかし、クラリネットは標準のBbの半音上のA調の楽器もある。
調子記号(♯,b)の多い曲は演奏が困難だからである。
かの有名なモーツァルトのクラリネット協奏曲はA調のクラリネットの使用が前提である。
現在、実際にそうしているかは知らないが。

                ホームへ      詩吟へ      次へ


inserted by FC2 system