Lesson17 「陽旋法について」(解説と稽古)

 現在の詩吟世界では殆どが「陰旋法」で吟じられています。ただし、漢詩、和歌に限りますが。俳句は別の旋法です。

詩吟に使われる旋法については「資料集」の中の「詩吟の音階」を参照してください。
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 陽旋法は現在の詩吟界では「異端者」と言っていい程、希少の存在になっています。今の言葉で言えば「絶滅奇種」というところかも知れません。
 
 私のいる市の年1回の吟詠大会で数年前に陽旋法で吟じた人がいました。違いの判った人がどの程度いたのか疑問ですが。
 私が知る限り、私が参加あるいは聞いた吟詠大会で陽旋法で吟じたのはこの人と私だけです。

 したがって、「陽旋法」とはどんなものか、知らない人が殆どだと思います。
 80歳以上の吟暦50年以上の人ならご存知の方もいらっしゃるかも知れません。
 私はまだそこまでの年齢でもないし経験も有りませんが、たまたまそういう人から教わったのです。
 尤も、教えた人が陽旋法と陰旋法との区別を理解していたかどうかは疑問なんですが。
 カラオケを得意としている人が、今自分の歌っている歌が長調なのか短調なのかを知っている、筈もないですよね。

 私自身、かの有名な「リンゴの歌」が短調だとは数年前まで知らなかったのです。
「あんなに明るい歌だから、長調に違いない」と、勝手に思っていたのです。
 ドレミを調べて初めて短調だと判っかったのです。

 それほどに短調と長調は単に歌っているだけでは区別が難しいんですね。
 でも、陰旋法と陽旋法とは違います。みな陰旋法に慣れているから、陽旋法の吟を聞くと「エーッ」と思うのです。そう思う人はかなり音感の鋭い人かも知れません。
 多くの人は「なんか違うなーっ」と思えば合格、何にも感じない人も多いかも知れません。

 で、参考に実際の吟を聞いてもらいます。吟題全て「不識庵機を撃つの図に題す(略称川中島)」に統一してあります。
@陰旋法。吟者 横山岳精
A第一句だけが陽旋法で、後は陰旋法。「詩吟入門」より、吟者 山元錦城
B陽旋法。吟者 木村岳風

 少しでも詩吟に馴れた人なら@に違和を感じないと思います。しかし、Bを聞くと「何か違うな」と思うのではないでしょうか。
 そう思わない人はこのLESSONをパスしてください。何の参考にもなりませんので。 

 陽旋法の表現には
数字譜を使うことにします。音声を入れてなければ(読者が音声を聞くことができないので)五線譜の提示は余り意味がないと考えるからです。

 ただ、これらの五線譜を陽旋法に読み替えることはできます。このページの最後の「追記」を参考にしてください。

  数字譜は、ハーモニカに使用されていますが、大正琴、ニ胡にも使用されています。ドレミ譜よりも世の中に周知されているものなのです。これに対してドレミ譜はこのサイトだけにしか存在しません。世の中に一般に存在しないものを理解したり使ったりするのは汎用性に欠けることになると思います。だだ、最初だけはドレミ譜を併記しておきます。
 楽譜に関しても初心者の方ならドレミ譜の方が判りやすいようですから。

 
是非、実際に声を出して真似てください。

楽器(音階の出るものなら何でも。ハーモニカ、リコーダー、オカリナ。勿論、詩吟専用の楽器であるコンダクターでも良いし、鍵盤楽器なら尚のこと良いですね)で演奏するのも良いです。
ただし、楽器はあくまでも音取りのためであって、
必ず声を出してください。
実際に吟じているつもりで気をいれて声を出すと尚良いです。

注)太数字は1オクターブ上の音であることを示す。


1)音階 (LESSON 1では陰旋法で表していますので、ご参照ください)

 5 6 1 2 3ーー 3 2 1 6 5 4 5−− 5 3 2 1 2 3 5ーー
 ソ ラ ド レ ミーー ミ レ ド ラ ソ フ ソーー ソ ミ レ ド レ ミ ソーー

ちなみに、陰旋法では、
 3 4 6 7 1ー−  1 7 6 4 3 2 3−− 3 1 7 6 7 1 3−−



2)前奏 (LESSON 2 〜 LESSON 4 のキーボードによる伴奏を参照のこと) 

 5 6 5− 1 2−− 3 2 1 6− 5 4 5−−
 ソ ラ ソー ド レーー ミ レ ド ラー ソ フ ソーー

ちなみに、陰旋法では、
 3 4 3− 6 7−−  7 6 4− 3 2 3−−
です。
 
3)「川中島」の場合

べんせい−−−  しゅくしゅく−−−−−− よる かわを−−−−−−−−−  わたる−−−−−−−−
3666−−6 3 66 6−5−−65 65 132−3−21−65  355−6−53−21 

かつきに みるー−−−−ー− せんぺいの−−−  たいがを−−−−−−−− ようするを−−−
12222 32−−−3−21 35555−6・ 2111−−21−65 36655−−−

いこんーー−−  じゅうねんー−−−  いっけんを−−−−−−−−−− みがき−−−−−−−−−
322−−32  2 111−−21 5 222−−3−21−65 355−−6−53−21 

りゅうせいー−−−−− こうていー−−−− ちょうだをー−−−−−−−−− いっすー−−
1 222−−3−21 3555−6−− 3 222−−3−21−65  3・5−−−

4)「富士山」の場合

せんかくー きたり あそぶー−−ーー−  うんがいのー−−−−−−−−  いただきー−−−−−−−−
5666− 521 366−5−−65  52222−−3−21−65 3555−−6−53−21 

しんりゅう−−−−−− すみ おゆー−−− どうちゅうのー−−−−−−−  ふちー−−
122 2−−3−21 35 65−−65 511 11−−2−1−65 35−−−
 
ゆきはー−−−  がんその  ごとくー−−− けむりはー−−−−−−−−−−− えの ごとしー−−−−−−−−
32−−32 3222  211−−21 5333−2−−3−21−65 35 655−−6−53−21 

はくせんー−−−− さかしまに かかる−−−−−− とうかいのー−−−−−−−−−− てんー−−

122−−3−21 35555 365−6−−− 53333−2−3−21−65 5−−−


追記

 LESSON 1〜4での五線譜では、真ん中の線(第3線)が主音「ミ」であると、定義しています。
 このことは、この五線譜の左端に高音部記号を付け、調子記号の♯を一つ付けた(付ける位置は決まっていて第5線です)ときのドレミの読みに一致します。

 仮に、♯を4つ付けるとホ長調(嬰ハ短調)になって、中央線(第3線)は「ソ」になります。そして、ほかの線や間は「ソラドレミ」の陽旋法を表すことになります

 ですから、これらのLESSONの五線譜は同時に陽旋法にも使用するができるのです。

 ただ、このようなことができるのは楽譜に対してそれなりの素養を必要とします。義務教育で音楽の科目を教わった程度では無理かも知れません。
 楽器の経験者、合唱部出身、などの人なら可能でしょう。

   

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